抗がん剤の副作用と漢方薬|産婦人科コラム

抗がん剤の副作用と漢方薬

2014年05月13日
 

『53歳Nさん。S状結腸癌の術後、肝転移・肺転移の再手術を受けた方で、抗がん剤の副作用(吐き気・倦怠感・肩こり・流涙)で苦しんでいる。漢方薬を試してみたいとの相談。』

Nさんは、私の知り合いで、遠方のため電話でのご相談でした。まずは精神的にもかなり参っている点や吐き気を考慮しての『茯苓飲合半夏厚朴湯(ブクリョウインカハンゲコウボクトウ)』に加えて『桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)』を飲んでもらうようにしました。

2週間後「薬を飲んですぐ温かくなり、よく寝られて便もしっかりと出る。外出して少し歩けるようになった。」とのこと。1ヶ月経つと肩こりも少し減ってきたようで、「抗がん剤を再開しているが、今回は吐き気やだるさが軽い。ただ、涙が止まらない。』というので、『茯苓飲合半夏厚朴湯』を2倍飲んでもらうように指示すると、「涙は止まったよ。」との事。私も「えっ、本当?」という印象でした。

『桂枝茯苓丸』は、「お血(オケツ)」(血液の滞り)を改善する漢方薬の代表選手みたいなものですが、一般的な外科手術の前後にも有効です。Nさんのように抗がん剤や放射線治療、度重なる検査や手術などすべてが「お血」の誘因になっているとおもわれる方にも効果があります。最近は「癌性疼痛」に「お血」が関連付けられている研究報告もあり「桂枝茯苓丸」を併用すると抗がん剤の副作用を軽減する効果とともに鎮痛効果も期待されています。

またNさんに処方した両方の漢方薬に含まれている生薬の「茯苓」はサルノコシカケ科(以前にサルノコシカケがもてはやされた時代がありましたね・・・)に属する生薬で「利尿作用」(余分な水分をさばく)があり、「胃内停水」(胃の周辺に余分な水分が余ったような状態)が著明で悪心・嘔吐のある方には有効で、よく高齢者にも用います。「駆お血剤」(「お血」を改善する薬)は、こじれた症状には有効なことがあり、他の漢方薬と併用されることが多く、時に劇的な効果がみられ、私自身がびっくりさせられることがあります。

抗がん剤の副作用に悩まされている方は、漢方薬も治療の選択肢の一つとして考えてもよろしいかと思います。

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