漢方薬解説シリーズ 五苓散|産婦人科コラム

漢方薬解説シリーズ 五苓散

2019年09月02日
 

今回は『五苓散(ゴレイサン)』についてお話します。『五苓散』は何回も登場している漢方薬ですが、生薬の構成は「蒼朮(ソウジュツ)」「茯苓(ブクリョウ)」「沢瀉(タクシャ)」「猪苓(チョレイ)」「桂皮(ケイヒ)」の5つで、そのうちの前者4つは「利水剤」(水のバランスを整える生薬)です。つまり、水分の代謝異常を治す薬なのです。これから紹介する症例は『五苓散』で治療された方ばかりです。

『症例①…47歳Sさん。主訴は頭痛で以前から台風が来る前に特に悪化する。最近ひどくなったので来院。』低気圧が近づいたときに起こる頭痛は気圧の変化の浮腫(水の偏在)ととらえているわけです。航空機で起こる「航空中耳炎」も『五苓散』で予防することが期待できます。

『症例②…81歳Мさん。夏の暑いときに庭仕事をしていたら、午後から頭が痛くなった。頭痛薬を希望して来院。』熱中症による脱水による水の偏在によるものです。『白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)』が熱中症では有名ですが、『五苓散』は 水のバランスを整えるので、「足りない部分に水を補う作用」があります。『白虎加人参湯』で水分を保持して、『五苓散』でうまく水を回すといったところでしょうか。

『症例③…54歳Nさん。主訴は頭痛で、最近接客でお酒を飲む機会が多く。二日酔い気味が続いたような状態。頭痛薬を希望して来院。』アルコールには利尿作用があるので大量に飲酒すると、軽い一過性の脳浮腫状態による頭痛を起こします。こういうときに「口渇」が生じます。これがまさしく「水の偏在」です。つまり、「のどは乾くが顔はむくむ」といった状態です。二日酔いに対する『五苓散』は典型的な使い方の一つです。

『症例④…31歳Sさん。子供からウイルス性腸炎がうつって昼から水様性下痢が6回も続く。軽い嘔気・頭痛もあり、来院。』ウイルス性腸炎の下痢も水の代謝異常になりますので『五苓散』はよく使われます。以前にも紹介しました。

このように『五苓散』は様々なケースで使われますが、基本は「水のバランスを整える」漢方薬である点に注目して下さい。構成生薬の「桂皮」は頭痛や動悸にもよく効きますが、他の4つの生薬のもつ利水作用をさらにパワーアップする効果もあります。単なるトッピングではないのです。ですから、頭痛や動悸のある方で「水の偏在」が背景にある方には有効なのです。

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医療法人社団 公和会 中村記念愛成病院
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