ひどい生理痛(その3)|産婦人科コラム

ひどい生理痛(その3)

2007年03月05日
 

『35歳Lさん。やせ型。10年前の出産後から、月経の量が多くなり、5年前には貧血の治療を受けたとの事。現在も月経時はさらさらした色の薄い多量の出血があり、初日から2日間は強い下腹部の痛みがあり、温めると少しは和らぐ。漢方薬に興味があり、来院。』

健康な方は生理が終われば、比較的身体はすっきりするものですが、Lさんは約1年前からは、生理後も身体の疲れがひどくなり、動悸や息切れも強まるとの事でした。これはまさに貧血の症状で、月経時の多量出血が原因とおもわれます。

ところで、ここで一つの疑問が生じませんか?同様の月経が続いていたのに、なぜ1年前からひどくなったのでしょうか?

産婦人科的には、子宮筋腫が出来る部位によっては、このような多量の月経血量に伴う貧血を起こすことがありますが、Lさんには問題ありませんでした。よくお話を聴くと、生鮮食料品店のパート勤務を始めたころから、もとからあった冷え性がますますひどくなったようです。ところが、夫は大の暑がりで夏場は帰宅するとすぐクーラーをつける一方、Lさんは家までクーラーなんてとすぐ切る…パートの疲れも手伝い、家庭内は一時的に険悪な雰囲気になったとの事でした。

Lさんの不調は、スーパーでの冷え過ぎにも原因はあるようです。スーパーの仕事がまさに貧血をひどくしてしまったようでした。

そこで月経時には『キュウキキョウガイトウ』、普段は『帰脾湯(キヒトウ)』と貧血治療のために鉄剤を飲んでもらいました。『キュウキキョウガイトウ』は、身体を温めて止血する薬で、身体が弱く冷え症の出血によく用います。『帰脾湯(キヒトウ)』の「帰」は以前に紹介した生薬の「当帰(トウキ)」のことで、「脾」は消化機能をつかさどる部分というお話はしましたね。つまり、消化機能の働きを強めてエネルギーを生み出すと同時に、不足した血を補う漢方薬なのです。

Lさんはその後、出血も少なくなり、貧血も改善しました。また、冷えの方も徐々にではありますが軽快をみていきました。現在は、夫婦仲もうまくいっているようで、離婚の理由に体質の不一致もいれてもいいかもと、笑ってお話するLさんでした。

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