更年期にもいろいろ|産婦人科コラム

更年期にもいろいろ

2006年09月16日
 

『49歳、Jさん、女性。最近、急に胸が苦しくなったり、気分が落ち込んだり、頭にきたりで、とにかく気が変になりそう。半年前から生理も不順で、同年代の人も更年期と云われた人もいるとの事で、来院。』

更年期の方の背景は、西洋医学的には「女性ホルモンの失調」ですが、単にそれだけではありません。家庭では子供の進学・就職の問題、仕事を持っている方は立場上のストレスなど様々なことが影響する年代なのです。

更年期障害を東洋医学的に扱うときのカギになるのは「気の異常」です。しかし、「気の異常」は「血」「水」にも影響するので、それぞれに対応する生薬で構成される漢方薬が必要になります。(気・血・水については以前の号を参照)

「気の異常」は決して精神の病気を意味するのではなく、私達が日常誰でも経験する現象です。イライラしたり、胸が締め付けられるような思い、気力がなくなる、頭に血が昇る感じなど皆さんは一度は経験しているでしょう。更年期に限ったことではありません。ですから、更年期専用の漢方薬が存在するのではなくて、主に「気の異常」を治す薬の一部が更年期の薬と称して有名になっているだけなのです。

Jさんには『加味逍遥散(カミショウヨウサン)』を処方しました。この薬の名前の「逍遥」とは、「ぶらぶら歩く、定まらない、多彩」という意味があります。つまり、様々な症状が出現するような方に使う薬として名付けられたのです。

『加味逍遥散』には「気の異常」の中でも「気うつ」に対応する生薬が含まれ、皆さんご存知の「薄荷(ハッカ)」も入っていて、発散させたり、通りを良くしてスッキリさせる効果があります。また、この漢方薬には「血」「水」のバランスも良くする生薬も含まれていますから、動悸やめまいにも有効です。

この方がもしも動悸・めまいが主な症状で「気の異常」が無い場合は、『桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)』を迷わず処方したでしょう。なぜでしょうか?「気の異常」が無いならば、それに対応する生薬は必要ないのです。生薬の種類が多ければ、症状に対する守備範囲は広がりますが、その分効果の切れ味は悪くなるのですから。この点が症状を見極めて処方を選ぶ「漢方薬の妙」なのですね。

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