食欲がなくて元気がない|産婦人科コラム

食欲がなくて元気がない

2006年08月23日
 

『31歳、Iさん、女性。最近、どうも食欲がない。お腹をこわすことが多い。やる気もないし、元気が出ない感じがしてたまらない。内科で消化器の検査をしたが特に異常なしといわれ、友人に漢方薬を試してはと云われて来院。』

Iさんのような方は結構いらっしゃいますし日常よくあることですが、これといった原因が見当たらないことも多いですね。

食欲の低下は、単に消化器の問題ではなく、気分の問題のこともしばしばあります。東洋医学では「五臓」という考えの中で「脾」という概念があるのですが、これは西洋医学の「脾臓」とは全く異なり、「消化吸収機能」そのものを意味する言葉です。そもそも「食べる」ことでエネルギーを補充するのですから、「脾」の機能低下はいろいろなトラブルの原因にもなります。

では、「脾」の機能低下をどうやって見抜くのでしょうか?顔色?それもありでしょうが、東洋医学では「胃内停水」「正中芯(セイチュウシン)」などというお腹を触って調べる手段もあります。

前者は、横になって胃のあたりに軽く手を当てて上下に揺さぶるとポチャポチャと音がすることをいいます(知り合い同士でやってみて下さい)。

後者は、お臍のすぐ上か下のお腹の真ん中に鉛筆の芯みたいものがあることをいいます。コツは指を軽く立てて左右に軽く押してみます。このサインがある方は「冷え」や「気虚」(詳細は以前の号参照)があることも多く、「人参」を使うとよいといわれています。

私はIさんには『六君子湯(リックンシトウ)』を処方しました。この方には「正中芯」がありましたので、「人参」が含まれた薬がいいはずです。『人参湯』という「人参」そのものの名前がついている薬があるのですが、私はあえて『六君子湯』にした理由はIさんには「胃内停水」もみられたことにあります。これがあるということは「余っている水をさばく」生薬も使いたいわけです。となると、『人参湯』よりは『六君子湯』の方が「水をさばく」作用が一枚上手ですし、かつ「人参」も含まれているのでこちらを処方したのです。

この方には『人参湯』でもそこそこ効くとは思いますが、基本骨格が「人参」という生薬以外に、患者さんの状態によってより有効と思われる生薬が含まれている方がいいはずです。こういう選択ができるのも漢方薬が生薬の複合剤(寄せ集め)だからなのです。

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