『葛根湯(カッコントウ)』の使い勝手|産婦人科コラム

『葛根湯(カッコントウ)』の使い勝手

2016年04月05日
 

『葛根湯(カッコントウ)』はいまやドラッグストアにも配置されており、漢方薬をあまり知らない方でも「かぜの漢方薬」といった印象でご存じかもしれません。しかしながら、実際に『葛根湯』が「かぜ」に対して発揮できるのは「かぜの引き始め」(詳しくは以前の号)であって実はそれほど「かぜ」に対する守備範囲は広くなく、「かぜ」ならどんな症状でもよいというわけではありません。

『葛根湯』は胸から上に起こっている炎症を抑えるという側面をもった漢方薬です。乳腺から首のリンパ節、あごの関節、鼻、中耳、目、頭に至る筋肉や腺の炎症に幅広く効果を発揮します。「かぜ」に対する守備範囲は狭いのですが、いろいろな症状に効果を発揮する意味では1つの漢方薬としての守備範囲は広い部類になります。しかも、即効性が期待できるのも特徴です。

[乳腺炎]
授乳中に乳管が詰まり腫れて熱をもつ場合、抗生剤を使うような重症例も『葛根湯』を併せて使用すると効果がアップします。乳腺という腺のコントロールを司っているので、母乳が出ない場合や逆に出過ぎて困るときなどにも使えます。

[顎関節症]
この病気は治療が難渋する場合も多いのですが、顎の関節が痛くてほとんど口が開けられず食べ物を噛むこともできない方が『葛根湯』を1週間位飲んでもらってかなり良くなった例がありました。

[中耳炎]
特に抗生剤が使えない小児の滲出性中耳炎には『葛根湯』が有効な場合があります。

[肩こり・眼精疲労]
肩こりに『葛根湯』が有効なことは以前紹介したことがあります。「目が疲れる」という方に処方したことがありますが、結構効きました。『葛根湯』が筋肉に作用するという点では、眼球を動かす筋肉にも有効なのかもしれません。

『葛根湯』がどうして上半身に有効なのか、その作用機序は分かりませんが、漢方薬は守備範囲は決まっているものが実は多く、上半身に効くものや下半身に効くものといった具合に分かれている薬が大半です。こういった作用をもつ薬は西洋薬にはみられません。漢方薬の特徴の一つといえましょう。

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