水毒に対する漢方薬(めまい・ふらつき)①|産婦人科コラム

水毒に対する漢方薬(めまい・ふらつき)①

2017年06月01日
 

「水毒」とは西洋医学の「水中毒」とは別の概念で「体内の水分のアンバランス(過不足)」としてとらえます。例えば、二日酔い・熱中症・激しい下痢は脱水による「水毒」で、逆にむくみ・胸水・胃内停水(おなかがチャポチャポする)などは水分過剰として、ほかに水様性鼻汁・喀痰などの分泌異常も「水毒」としてとらえます。重要なことは「利水剤」(水をさばく生薬)として知られている漢方薬で改善が見込める症状を「水毒」と称していると理解していただけるとよろしいかと思います。

利水剤の基本生薬は「茯苓(ブクリョウ)」「蒼朮(ソウジュツ)」で、「水毒」に対する代表的な漢方薬は『五苓散(ゴレイサン)』です。特にめまいのときによく使われる漢方薬は『五苓散』『真武湯(シンブトウ)』『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』『半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)』『苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)』があります。

ちなみに良性頭位性眩暈の急性期には『苓桂朮甘湯』がよく使われます。気力・体力が低下して慢性的なふらつきが起こる場合は『半夏白朮天麻湯』が比較的長期にわたって使われます。この2剤でうまく効かない場合には『五苓散(感染症などの脱水など)』『真武湯(脳動脈硬化?などの一瞬のめまいなど)』『当帰芍薬散(生理中のめまいなど)』に変更または併用したりします。

西洋医学的には不定愁訴と診断された方で胃腸虚弱と「水毒」に注目して『半夏白朮天麻湯』の処方により倦怠感・ふらつき・目の奥の痛みが改善した例や、数年前から続くアルコール依存症の方の「水毒」によるめまい・頭痛に『苓桂朮甘湯』の処方で改善した症例も私自身経験しています。

最近で驚いたのは、めまいで利水剤を使っている患者さんが数年間悩まされていた花粉症を回避できたとおっしゃっていたことです。花粉症も一種の「水毒」ととらえることもできますので同時に効果があったのかと思われます。漢方治療では西洋医学の視点では考えられない効果が得られることがしばしばあり、漢方理論が机上の空論ではないことを実感させられます。

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