漢方薬解説シリーズ「呉茱萸湯(ゴシュユトウ)」|産婦人科コラム

漢方薬解説シリーズ「呉茱萸湯(ゴシュユトウ)」

2018年11月19日
 

今回は『呉茱萸湯(ゴシュユトウ)』という漢方薬についてお話します。この漢方薬は今日では頭痛や筋緊張性頭痛のような発作性の激しい頭痛によく使用されますが、使用の際にはいくつかのポイントがあります。

構成される生薬は4種類でそのうち主薬は、名称にもなっている「呉茱萸(ゴシュユ)」でミカン科のゴシュユという果実です。この生薬には、胃腸を温め、頭痛と頭痛に伴う吐気を抑える作用があるので、「寒気」「冷え」をきっかけに出現する頭痛でしかも「吐気」を伴うタイプに有効ということになります。頭痛以外では、「げっぷ」「嘔気」など単独の症状にも使用できますし、「生理痛」にも有効な場合があります。

他の3種類の構成生薬として「生姜(ショウキョウ)」は身体を温め、吐気を抑える作用が あり、「大棗(タイソウ)」は健胃・精神安定作用があり、「人参(ニンジン)」は身体を温め、消化機能改善作用もあります。すなわち、頭痛に用いられることが多い『呉茱萸湯』ですが、胃の冷えを改善することが本来の目的なので、単に「頭痛」に対して用いても有効ではない場合もあるわけです。しかしながら、日本頭痛学会が作成している「慢性頭痛の診療ガイドライン」で有効性とそのエビデンスの存在が認められていますので、漢方医学的に「証(身体の状態)」が合えばとても有効なお薬です。

私の使い方としては、「片頭痛」以外にも胃の冷えによる「慢性的な下痢・嘔吐などの消化器症状」、または「月経前緊張症」「月経前症候群」などにも使用しています。このような場合で、寒冷症状が強く『呉茱萸湯』のみで効果が弱い場合には、「附子(ブシ)」併用したりもします。薬物乱用による頭痛が最近話題になっていますが、この場合にも、『呉茱萸湯』は第一選択薬としても使えるという報告があります。

『呉茱萸湯』の欠点としては、かなり苦い薬ですので、飲みにくいと思われます。「良薬口に苦し」という言葉がありますが、実は「証」が合えば、意外と患者さんは飲んでくれますし、「証」が合わないときは、余計に飲みにくい薬になってしまいますので、飲めるかどうかも実は重要なポイントです。

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