「妊娠しやすい体づくり」には、どのようなことを心がけるとよいのでしょうか? 自身のライフスタイル(食生活・運動・睡眠など)を見直し、健康で妊娠しやすい体づくり を目指しましょう。
1. ストレス対策
現代社会はストレス社会と言われていますが、ストレスは女性ホルモンの天敵で、脳の視床下部や脳下垂体はストレスに非常に弱いと言われています。そのため、なるべくリラックスして過ごすよう心がけるのも大切です。
また、男性にもストレスは大敵で、日頃の生活に疲れて毎日を楽しむ余裕がないと、心身ともに疲れが溜まります。男性はこの疲労が精子をつくる能力にも影響し、精液検査などでも4倍近く差が出ることがあります。
2. 適度な運動は新陳代謝を促しストレスを解消する
現代人はデスクワークが増え、車や電車での移動がほどんどであり忙しくて身体を動かせる時間もとりにくいのが現状です。そういった状態では、食事で接種した糖質や脂肪をじゅうぶんに燃焼させて消費することができずに身体にどんどん溜めこんでしまうことになります。水分に関しても同様で、無駄な水分はナトリウム(塩分に含まれています)と結びついて身体にいつまでも溜まるため体重を増やしてしまいます。
適度な運動によって血液の循環をよくすると、女性の場合は骨盤内の血流の滞りが解消され、生殖器官の働きがよくなります。一方、男性も適度な運動を心がけることで体の機能が向上し、勃起力、射精能力が高まります。
どのような運動をするかは、自分の体力に合わせて選ぶとよいでしょう。散歩やジョギング、ヨガなどがおすすめですが、適度な運動を毎日続けて行うことが大切です。また、特別な運動を行わなくても腹筋運動や手足の曲げ伸ばし、軽いストレッチなど、家事や仕事の合間にできる運動を行いましょう。
3. 冷え性対策
冷え性は妊娠しやすい体づくりの大敵です。血行が悪いと卵巣に酸素や栄養が十分に届かず、卵巣機能の低下を招くのです。食事や日常生活を見直して冷え性を改善し、妊娠しやすい体づくりをしましょう。
3つ以上あてはまる人は冷え性対策をして妊娠しやすい体づくりをしましょう!
- 平熱が36度に満たない
- 手足は冷たいのに上半身がほてる「冷えのぼせ」体質
- むくんだり、便秘になりやすい
- 肩こり、腰痛、頭痛、月経痛がある
- 冷たい飲み物や食べ物が好き
- お風呂はシャワーで済ませることが多い
紹介する冷え性対策の中には自宅でできる簡単な方法もあります。ぜひ積極的に実行してみてください。
① お風呂にゆっくりつかる
夜はぬるま湯の半身浴で、できれば30分以上はゆったりお湯につかりましょう。 血行が良くなると気分もリラックスでき、冷え性の原因となるストレスも緩和させます。
②体を温める食材を食べる
生野菜よりも温野菜にして食べたり、あたたかい飲み物を飲むなど、体の内側からあたためましょう。血液の流れによって栄養が体の隅々まで運ばれます。ごぼう、黒ゴマ、山芋、しょうがなど黒い色の食材は体をあたた めてくれるので、積極的にとることがポイントです。
③ 水分の取りすぎに注意
最近は水分をとることをすすめられますが、これはきちんと排泄することが必須条件です。十分な運動をせず水分が体内に残ると、体を冷やす原因になります。冷たい飲み物を、あたたかいものにかえるだけで水分のとりすぎを防ぐことになります。
4. バランスの良い食事
私達の体は食べ物から作られています。脳が働き卵巣が機能するのも、食べ物から得た栄養のおかげです。過度のダイエットは、視床下部からのホルモン分泌を障害して、難治性の排卵障害の原因になります。そのため、ダイエットのために食事を抜くのは逆効果です。
1日3食が基本であり、できるだけ朝食・昼食・夕食の時間帯を規則正しくすることです。健康的な食生活を作ることは妊娠しやすい体をつくるだけではなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にもつながります。
5. なるべく適正体重に近づける
女性の不妊原因の12%は、肥満または低体重と関連していると言われています。
痩せすぎの場合は、女性ホルモンの分泌量が少なくなる場合もあります。逆に太り過ぎの場合は、女性ホルモンの分泌量が増えますが、体重に対してホルモンの量が追いつかないため、こちらもホルモンバランスが崩れる要因です。無理なダイエットはよくありませんが、女性ホルモンは「たった3キロ」の違いで驚くほど分泌量が変わるとも言われています。
※妊娠に適したBMIは20~24で、日本肥満学会では、BMIが25以上の場合を「肥満」、18.5以下の場合を「低体重」としています。
【BMI計算式】 ※身長160cmの場合、1.6(m)で計算。 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=小数第二位まで
① BMIの数値を改善する食生活
BMIの数値が高かった場合、まずは食事の改善によって健康な数字に戻すことが求められます。脂肪分が多く含まれる揚げ物や洋菓子など控えることが大切になってきます。
また、余分な糖分は肝臓で脂肪に変換して体内に蓄積されてしまうため、糖分を控えることも重要です。また、体内の水分が多すぎてBMIが高い場合は、排出を助けるカリウムが多い食品(スイカ、ジャガイモなど)を積極的に食生活に取り入れることが重要です。
※当院では、BMIの結果から食生活の改善が必要なケースは、栄養士による食事指導を行っております。また食事指導をご希望の方は看護師までお知らせください。
6. 喫煙・飲酒などの嗜好品
① タバコ
『百害あって一利なし』の喫煙は、思い切って卒煙しましょう。自分が吸わなくても、パートナーや家族が吸えば受動喫煙となり、その害は吸う人に比べてそれほど変わらないと言われています。
喫煙は男性にも影響が見られます。タバコを吸っていない男性に比べ、精子の数が少なかったり勃起不全のリスクが高まるなど、様々な研究データが報告されています。喫煙と妊娠に関わる研究から、禁煙することで自然妊娠の可能性も高まり、不妊治療の成功率も改善できることがわかっています。
不妊治療のみならず妊娠・出産後のことも考え禁煙しておきたいものです。
② 飲酒
飲酒が必ずとも不妊につながったり、子供の発育に悪影響を及ぼすとはいうことではありません。しかし、多量の飲酒は、月経不順、排卵障害などになる恐れがあるという報告があります。
また、妊娠中は胎盤から胎児へ、授乳中は母乳から赤ちゃんにアルコールが運ばれます。男性が多量に飲酒した場合や長期に摂取した場合にも精子数や運動率などに影響を与えるとも言われています。そのため、採精が必要となる3ケ月ころから、できるだけアルコールを控えましょう。
※妊娠の準備として、女性の飲酒の目安は、週に1~2回程度、アルコール1~2単位です。
ビール(アルコール度数5度)中ビン1本(500ml) / 缶チューハイ(アルコール度数5度)1缶(約500ml) / ワイン(アルコール度数14度)グラス1杯(約180ml) / 日本酒(アルコール度数15度)1合(180ml)
③ コーヒー(カフェイン)
カフェインはお茶、紅茶、ココア、コーラなどにも含まれ、コーヒーはその2倍のカフェインを含んでいます。カフェインの過剰な摂取(例えば、コーヒー5杯/日)は、妊娠する力を低下させ、流産しやすくさせるとも言われているため、コーヒーの摂取は1日2杯までにすることを呼びかけています。
最近はノンカフェインの飲み物も増えてきました。リラックス効果、冷え性や便秘解消が期待されるハーブティーなどをとるのも良いでしょう。
レギュラーコーヒー:60mg / インスタントコーヒー:57mg / 紅茶:30mg / コーラ飲料:36mg~46mg / ココア:9mg / 煎茶 / ウーロン茶:20mg / チョコレート:61mg/100gあたり
生活習慣と流産 |
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1.喫煙(>10本/1日) |
2.アルコール(>2杯/週) |
3.肥満(BMI>30kg/m2) |
4.カフェイン(>2~3杯/日) |